みなさんは「VUCA」という言葉を、聞いたことはありますか?
VUCAとは将来の予測が立たない状況を意味する言葉で、近年ビジネスシーンで耳にする機会が増えています。
現代社会は、新型コロナウイルスのような病気や、自然災害、AIといったテクノロジーの急速な進化など、良いことも悪いことも含めて予期せぬことが次々と起こり、次にどんなことが起きるか、予測しにくくなっています。
今回は、「VUCAの時代」とも呼ばれる将来予測が難しい現代社会に、どのように立ち向かって行けばいいのかを、ITの視点から解説していきます。
VUCAについて基本的な知識が知りたい方や、この時代に求められているものが知りたい方には、ぜひ読んでいただきたい内容となっています!最後までご覧ください。
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VUCA(ブーカ)とは社会やビジネス環境における高い不確実性を表す言葉で、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語です。
この概念は、元々アメリカで使われていた軍事用語で、冷戦後の複雑な軍事戦略状況を表現するために使用されていたものでした。その後、2010年代の変化が激しい情勢を表す言葉として、ビジネス分野でも広く使われるようになりました。以下で、それぞれの概念を解説していきます。
・Volatility(変動性)
Volatilityは、テクノロジーの進化や社会の多様性、市場の変動など、環境が目まぐるしく変わる「急速な変化」を指します。先の見通しがつかず、将来の予測を立てることが難しいことは、社会の不安要素となっています。
・Uncertainty(不確実性)
Uncertaintyは、自然環境、政治、国際関係、制度などの不確実な要因が存在していたり、気候変動や新型コロナウイルスのような未知の病が出現したりと、急激な問題が発生する可能性のある状況を指します。
・Complexity(複雑性)
Complexityは、グローバル化により、国々の文化、法律、常識が異なり、ビジネス環境が多面的かつ複雑になっている様子を指します。
・Ambiguity(曖昧性)
Ambiguityは、ここまで挙げた「Volatility」「Uncertainty」「Complexity」が絡み合い、因果関係が不明確で前例のない出来事が増加していることを指します。現代社会は、過去の成功例や実績に頼るだけでは通用しない、曖昧性の高い状況になっています。
VUCAが注目される理由には、社会情勢やビジネスにおいて、予測不可能な出来事や変化が頻繁に発生し、不確実性が高まっていることが挙げられます。
現代社会では、2008年のリーマンショック、2019年の新型コロナウイルスの流行、たびたび起こる自然災害など、予測困難な出来事が次々と起きています。2019年には、経済産業省から『人材競争力強化の9つの提言』が出され、VUCAの時代を乗り切るためには、組織・企業文化の改革が最重要であることが示されました。
特に、経営トップからのリーダーシップとMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の実行が求められ、イノベーションを促進する取り組みが推奨されています。
※ ミッション・ビジョン・バリューとは
各企業により使用方法が異なり、明確な定義はありませんが、一般的には「企業理念」「経営理念」「行動指針」などがこれに該当します。企業の価値観を言語化することで、社員一人ひとりの行動や判断の基準となります。
それでは、「不確実性」とは具体的にどのようなものを指し、現時点でどのようなことが予想できるのでしょうか?
・気候変動、パンデミック、国際情勢などの想定できない現象
経済やビジネス、環境問題など多方面で、今後も対処方法が分からない、予測のできない出来事が頻繁に発生すると考えられます。企業は、このような社会的不安要素、政治的変化、国際的対立などが増加することで生じるリスクや不確実性を考慮し、情報収集を行いながら、適宜柔軟に対応していくことが求められます。
・常識の変化
経営資源の価値が変化し、過去の常識が通用しなくなることは珍しくありません。例えば、元々競争優位を築く経営資源として、設備投資や固有資産、従業員の雇用・育成が挙げられていました。しかし、スマホなどのモバイルデバイスやクラウドサービスといったテクノロジーの進歩により、従来の経営資源を中心に考えることは、時代遅れになりつつあります。これまでの当たり前を疑って、定期的に経営資源を見直し、迅速に対処していく必要があります。
・テクノロジーの急速な変化とイノベーション
AIをはじめとするデジタル技術の発展や、機械の高度化による自動化など、テクノロジーの急速な進化が、市場やビジネスモデルに大きな変革をもたらしています。新たなテクノロジーの導入と急速な変化により、市場や競争環境も急速に変化するため、必然的に企業も迅速な適応が求められるようになっています。そのため、DXの取り組みは今や、企業活動を行う上で必要不可欠になってきています。
ここに挙げたような変化に適応できない企業や組織は、新しいビジネスモデルや競合他社に取って代わられる可能性も高まってしまいます。従来の常識が当たり前ではなくなり、新たなアプローチやビジネスモデルが求められているため、VUCA時代には変化に対応する柔軟性と適応力が重要です。
OODA(ウーダ)ループは、米・空軍軍人のジョン・ボイド氏によって提唱されたアクション・サイクルで、迅速な判断力と行動力を高めるとされています。彼は空軍の戦闘パイロット兼航空戦術家として、迅速な意思決定と、的確な行動を実行するために、OODAループを考えたと言われています。OODAループのプロセスは以下の通りです。
・Observe(観察)
OODAループのプロセスは、市場や顧客などの対象物の観察から始まります。目の前にあるものを深く集中的に観察し、偏りのない客観的な情報を収集します。
・Orient(方向づけ)
収集した情報をもとに現状や環境を分析し、状況を客観的に判断し、これをもとに次のステップへの方向性を設定します。
・Decide(決定)
方向性が明確になったら、次は具体的な行動方針やアクションプランを決定します。想定できる限りの選択肢を検討し、最善のものを選択します。
・Act(行動)
これまで決定した行動計画を実行に移します。その後実行結果を評価して観察し、このプロセスを繰り返していくことで、変動性の高い状況に、より効果的に対処できるような仕組みを確立します。
このようにOODAループは迅速な適応力をの向上を高めるフレームワークです。このループを繰り返すことで、変化にも柔軟に対応することができます。
また、OODAループと同じように、有名なビジネスフレームワークが「PDCAサイクル」です。PDCAは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善」)の4つのフェーズを継続的に繰り返すことで、ブラッシュアップしていく手法です。
OODAとPDCAは、そもそも目的や役割が異なります。OODAループは、競争環境下での意思決定に重点を置き、正確かつスピーディーな判断や行動をとることを目的としています。一方で、PDCAサイクルは品質改善に重点を置き、4つのフェーズを繰り返すことで、問題点の特定や改善策を練ることを目的としており、中長期的な改善に有効とされています
ビジネスやプロジェクト管理のゴールまでの期間を加味して、適切なフレームワークを選択することが大切であり、場合によっては、2つを併用することで、より戦略的なビジネスを行うこともできます。
従来の組織体制ではVUCAに対応できないと言われていますが、DXの推進により、業務効率工場や新たなビジネスモデルの構築が可能となり、VUCAの時代を戦い抜ける組織体制が作れると言われています。
プロジェクト管理ツールやデータ分析ツールなどのテクノロジー駆使して、ビジネスプロセスや膨大で複雑なデータを整理し可視化することは、意思決定プロセスを改善するのに役立ち、VUCAの素早い変化に対応できるようになります。
また、近年「データドリブン経営」(データに基づいた経営)が推奨されていますが、これも不確実性の高い状況において、合理的な意思決定を手助けしてくれます。組織内のすべての人が最新の正確なデータにアクセスし、そのデータに基づいて意思決定とアクションを行うための権限と意識を備えることで、不確実な情報のデータ分析が可能になります。このように、データドリブンなアプローチに移行することで、組織はVUCAの時代に適応し、競争力を上げることができます。
VUCAの時代には、新たなスキルや準備が必要です。それぞれいくつか紹介します。
【スキル】
・柔軟性と適応力
将来予測が不透明なVUCAの時代では、変化に対する柔軟性や適応力が求められます。そのため、リスクも考慮しつつ、臨機応変に対応できるスキルを身につける必要があります。
・リーダーシップとコミュニケーション能力
VUCAの時代には、変化に対応するための迅速な判断が重要です。率先して行動し、得た情報を基に対処する能力が求められます。
・テクノロジーの知識
急速に進化するテクノロジーの情報を積極的に収集し、自社との関連性を常に考え、新たな制度やテクノロジーの導入やアイデアに結びつけるスキルが求められます。
【準備】
・DXへの理解と環境
DXはVUCA時代を生き抜く重要なポイントの一つです。環境の変化やデジタルテクノロジーに関する情報を積極的に収集し、理解してその活用方法を確立することが必要です。デジタル化を進めることで作業効率向上だけでなく、新たなサービスの誕生や新しいビジネスへの展開も期待できます。
・データの可視化
ITツールを活用し、データドリブンな意思決定を促進するために、データの可視化プロセスを整備します。データを集めるだけでなく、そこから意味ある情報を引き出せるようにすることが大切です。
ここまで、VUCAとは?という基礎知識から、この時代にあったフレームワーク「OODAループ」やITの視点から時代に立ち向かう方法、必要な準備や必要とされるスキルについて解説してきました。
OODAループの活用やDXを進め、データを活用した戦略や、迅速な判断が下せる柔軟性のある組織体制を構築してていくことで、急速に変化し将来予測の難しい「VUCAの時代」に立ち向かっていくことができます。
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