皆さんは位置情報共有アプリを使ったことはありますか?「位置情報共有」と聞くと「相手の行動を監視する機能」という印象がある人もいれば、「便利な機能」という印象がある人も居たりと、各個人で様々な印象があるかと思います。そして最近の若者にとっては、便利な機能という位置付けがさらに発展し、位置情報共有がコミュニケーションツールの一つとなっているのです。
今回は、テクノロジーの発展で変わる人々のコミュニケーションの取り方から、なぜ位置情報共有したがるのか、また位置情報共有アプリの代表的な存在であった「Zenly」がサービスを終了したことで続々と誕生し需要が高まる代替アプリについて解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
リアルタイムのコミュニケーション手段は、技術の進化や社会のニーズとともに変化してきました。以下がその流れです。
電話
長い間、個人・ビジネス問わずリアルタイムのコミュニケーションとして「電話」が主流だった。それまで距離の離れた相手とは手紙や郵便などタイムラグの生じるコミュニケーションしかできなかったが、電話の誕生により、距離の離れた相手ともリアルタイムのコミュニケーションが可能となった。
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メール
インターネットの普及とともに、「メール」が主要なコミュニケーション手段となった。リアルタイム性を持ちながら、時間や場所に制約を受けずにやり取りできるため、電話よりも柔軟性があり、電話からメールへのシフトが進んでいく。
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チャット
スマートフォンの普及や、グローバルなコミュニケーションの需要増加に伴い、「チャット」が急速に普及している。チャットアプリやメッセージアプリを通じて、テキストベースの文章で会話や情報共有が行われている。
メールとチャットは似ている気もしますが、チャットがより迅速なコミュニケーションを行えるため、現代社会のニーズと合致し普及しているようです。特徴は以下の通りです。
・相手がオンラインであれば即座にメッセージを受け取れるため、メールよりもリアルタイム性がある
・複数の人々とリアルタイムのやり取りが簡単で、短い文書でのやり取りがメインのため直感的なコミュニケーションが可能
・スマートフォンやモバイルデバイスでの利用がしやすく、カジュアルなコミュニケーションが可能
若い世代は、生まれた時から豊富なモノ・サービスに囲まれた環境があり、比較的物欲の少ない世代と言われています。だからこそ、「モノ」よりも体験や経験といった「コト」に価値を感じ、何かを「所有」するのではなく、他人と「共有」をする消費行動を好むと言われています。
このような傾向から、エクスペリエンス・エコノミー(経験経済)やシェアリング・エコノミー(共有経済)といった概念も生まれているほど、「経験」や「共有」が重要視される時代になってきているのです。
また、スマートフォンの普及とともにSNSやチャットが普及し、距離が離れている相手とも「リアルタイム=瞬時接続」でのやり取りが当たり前になっている現在、「位置情報共有=常時接続」の要素が加わることで、よりリアルタイム性のあるコミュニケーションが取れるため、位置情報共有機能がコミュニケーションの大事な一部となってきているのです。
冒頭でも触れた、「位置情報共有=監視」のようなイメージもテクノロジーの発展とともに変化しつつあります。以下が位置情報共有の立ち位置の変遷です。
プライバシー重視の時代
自身の位置情報を保護し、他人と共有することには慎重。位置情報の共有行為はプライバシーの侵害とみなされることもあった。
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利便性重視の傾向
位置情報を利用したアプリやサービスが増え、位置情報共有が「利便性の向上」につながるとの認識が広まる。
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ソーシャルコミュニケーション
ソーシャルメディアの普及により自発的に位置情報を共有することも増える。位置情報を通じて自身の活動や経験を共有することで「社会的な繋がりの一形態」として受け入れられるようになる。
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安全・緊急時の利用
災害や緊急事態が発生した際に、位置情報提供により救助や支援活動効率的に行われることが広まり、緊急時の利用の価値が広まる。
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個々の選択とコントロール
個々のプライバシーとセキュリティに対する関心が高まり、ユーザー自身でアプリやサービスのプライバシー設定をコントロールできるようになる。
このように技術の進歩と社会の価値観の変化に影響を受け変遷してきました。ただここで課題として挙げられるのが、若い世代でプライバシーへの危機感や配慮が足りず、問題が起きているという点です。便利な機能を最大限に活用できるよう、位置情報を共有することによるリスクについても理解しておきたいです。以下がリスクと対策です。
・情報過多のリスク、依存や時間浪費のリスクも考え、ネガティブな意見に触れる可能性もあるため、適切なユーザー行動とバランスを保つ
・投稿した情報やコンテンツはデジタル上に残り、場合によっては進学や就職など将来に影響を及ぼす可能性がある
・適切な設定やセキュリティにてプライバシーを保護する
位置情報を共有することは利便性があることで、社会との繋がりや価値のあるものだという認識は全世代で広まりつつあります。しかし、それぞれの世代が過ごした時代の背景も大きく価値観に影響し、一定の先入観や抵抗感が拭えないのも現状です。以下は、年代別にまとめた位置情報共有に対する価値観・イメージです。
・ベビーブーマー世代(1946年〜1964年生まれ)
第2次世界大戦後の出生率の上昇した時期に埋めれた世代を指し、ITはまだまだ発展途上で、電話が最速のコミュニケーションツールの時代。
プライバシーとセキュリティを重視し、位置情報共有には慎重である。
・X世代(1965年〜1980年生まれ)
バブル世代、団塊ジュニア世代、就職氷河期世代とも呼び、ある程度の経済力がついた時期にインターネットやスマホなどの通信環境が整い始め、アナログからデジタルへの変化を経験した世代。生まれた時からデジタルやIT機器に囲まれていたわけではないため「デジタルイミグラント(Digital =デジタル移民)」とも呼ばれている。
便利さや効率性を重視しつつ、個人の自由とプライバシーのバランスを求め、適切な制限や選択肢を重要視する世代であるため、位置情報共有については使い方によっては便利で役立つと考える。
・ミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)
別名Y世代とも呼び、この世代はインターネットの普及が飛躍的に進んだ時代に育った最初の世代である。小さい頃から身近にパソコンや携帯があるため、従来の世代に比べてITリテラシーが高い。
位置情報共有をソーシャルメディアやコミュニケーションの一環として活用し、交流や新しい出会いを楽しむ。
・Z世代(1997年〜2012年生まれ)
生まれた頃からインターネットに囲まれて育ち、スマートフォンやソーシャルメディアが一般化している中で成長。コミュニケーションの中心にSNSがあり、リアルタイムな情報共有やコミュニティ活動に慣れ親しんでいる世代。
距離の離れている相手とも位置情報共有する事は当たり前で、常時接続することでの安心感を得ながら、交流の一部として捉えている。
「コミュニケーション手法の変化」や「位置情報共有の立ち位置の変化」、「人々の価値観の変化」により、コミュニケーションの重要な機能の一つとなった位置情報共有ですが、そのポジションを明確に示したのが、当時大人気アプリだった「Zenly」ではないでしょうか?
2015年にフランスのZenly社によって開発された位置情報共有アプリで、同じアプリを入れている家族や友人同士でGPSを介して現在位置を共有し合うことができ、日本でも10代を中心とした若者に人気を博していました。
2017年に米Snap社がZenly社を買収し、2019年にはApple Storeの「ソーシャルネットワーキング」のカテゴリー内で3位を記録するほど人気だったアプリでしたが、運営会社のSnap社が経営不振に陥り、約20%の人員削減の発表と共に2022年9月1日にサービス終了を発表し、2023年2月3日にサービス提供を終了しました。
Zenlyを使っていた人の利用目的の代表例は以下の通りです。
・待ち合わせに便利
・相手の様子を見てから誘う
・繋がっていることが嬉しい
・家族と繋がって安心(子どもの居場所把握)
・スマホ忘れてもすぐ探せる
確かに、待ち合わせや友人を遊ぶに誘う際、本人に聞かずともアプリ上で確認できるのは、便利かも知れません。また、どこにいても家族や友人といった誰かと繋がっている安心感を持てる点も、利用理由の一つでした。
ただこの安心感という点は若者特有の感覚かもしれません。こちらに関しては、以前書いたブログ記事『脱“SNS映え” SNSに疲れた若者たちがされでも使い続ける理由』にてSNSで誰かと繋がる安心感を得たい若者の心理について書いてますので、よければそちらも合わせてご覧ください。
Zenlyが終了するという発表から、ユーザーたちは代替サービスへ大移動を始めます。そして、Zenlyに酷似したサービスは、リリースからとてつもないスピードでユーザーを獲得したのは言うまでもありません。
また、前述した世代間による位置情報への価値観の違いに目を向け、どうしても位置情報共有に抵抗のあるユーザー層へ向けて、あえて位置情報共有の機能に特化しないサービスも誕生しています。例えば、最新のテクノロジーを活用したARカメラやチャット、歩数・カロリー計算といったヘルスケアなどの親しみやすい要素を加えた、オリジナリティのあるサービスも人気が出ています。
ここで、位置情報共有アプリおすすめサービスを紹介できればと思いましたが、サービスの数が多く、文字数の関係上絞らざるを得ませんでした…今回は特に、Zenlyのサービス終了を受けてリリースされたり急速に人気の出た、位置情報共有アプリおすすめサービスを3つ紹介します。
・Snapchat
Snap Inc. が開発・運営しているSnapchatは2011年にサービス開始し、アクティブユーザーが6億人を超えている。
特にZ世代からの支持が厚いサービス「マップ」「チャット」「カメラ(AR)」「ストーリー(ソーシャル)」「スポットライト」の5つを主な機能としており、Zenlyを買収した際にSnapchatには「Snap Map」というZenly同様の機能が盛り込まれた。日本国内ではカメラアプリとして利用する人も多い。
・NauNau
NauNauは日本の現役大学生兼スタートアップ社長が個人的な趣味で開発を始めたサービスで、2022年10月にサービス開始し、約3ヶ月で270万ダウンロードという驚異的な数字を叩き出した。
Zenlyがサービス終了を発表した翌月にサービス開始したことにより、代替アプリを探していたZenlyユーザーに見つかり、うまくユーザーを獲得できたと予想できる。
メイン機能はZenlyと同じくリアルタイム位置情報共有だが、NauNauには「歩数・カロリー計算」機能が備わっており、この機能を通し、友人と一緒に運動をしたり目標値に向かって共同作業を楽しんだり出来る仕様。今どこにいるというリアルタイムな位置情報を共有することに抵抗があるユーザーに対しても、新しいアプローチが出来てより多くのユーザーを獲得できている。
・Jagat
Jagat Technologyが開発したJagatアプリは、ダイレクトメッセージやビデオチャットでJagat上の友人と近況を確認したり、プライベートコミュニティを構築したりすることができるリアルタイム共有アプリ。
2023年3月、シンガポールのチームが開発した新しい地図情報が発表され、3日で50万ダウンロードを達成したサービス。爆発的人気が出ている理由としては、「Zenlyの代わりに、Jagatはあなたのそばに永遠に!」キャッチコピーがついているほど、Zenlyに酷似したサービスであるという点である。
毎週アップデートを重ね、パフォーマンスの最適化やユーザーからのニーズに応えている。また、世界中のユーザーに向けてサービスを提供することを目指しており、世界中のどこにいてもJagatの全機能を利用することができる。
ここに挙げたサービス以外にも様々なサービスが誕生し、代替アプリがリリース直後からすごい勢いでダウンロードされています。ここ挙げた位置情報共有アプリのおすすめサービス以外にも多くのサービスが誕生し、リリース直後からすごい勢いでダウンロードされています。このような状況から、やはり位置情報共有の需要はこれからも継続すると予測できます。
位置情報共有アプリの需要が継続されると予測できる中で、これからは他のテクノロジーとのコラボレーションも期待できます。それによって、さらなるサービス内容の充実や新たなスタンダードが誕生するかもしれません。ここでは、位置情報共有アプリの更なるバージョンアップに向けて、どのような取り組みがされるのか、いくつか例を挙げていきます。
・個人化とローカリゼーションの強化
ユーザーの好みに合わせたコンテンツや体験を提供、また位置情報活かしてユーザーの近くにあるお店や、開催されるイベントなどのローカル情報にも焦点を当て、より地域密着したサービス提供が期待できる。
・AIとの統合
AI技術を使って、ユーザーの行動や好みを分析し、より適切な情報やおすすめを提供する。また、AIを活用してリアルタイムのトラフィック情報や天候情報を提供することも可能になる。
・ユーザー体験の向上
ユーザーの利便性と体験を向上させるために、AR技術を活用した拡張現実のナビゲーションや、リアルタイムのグループ位置共有機能などといった様々な機能やインタラクションが開発される可能性あり。
・プライバシーとセキュリティへの取り組み強化
ユーザーの位置情報は非常に個人的な情報であり、そのセキュリティとプライバシーの保護は重要です。今後、位置情報共有アプリはさらなるセキュリティ強化やプライバシーオプションの提供に注力することが期待される。
ここまで挙げたように、よりユーザー体験の向上に向けた取り組みが活発になると予想できます。また、プライバシーに関係する情報を取り扱うサービスだからこそ、セキュリティの取り組みはより一層強まるでしょう。
人々はコミュニケーション手法の変化に伴い、リアルタイム性を求めるようになりました。また、テクノロジーの進化ともに立ち位置も変遷していき、コミュニケーションの必要機能として存在感を示していく「位置情報共有」は、これからも継続して需要があると予想されます。
今後他のテクノロジーとのコラボレーションで、よりサービス内容が充実することも期待され、位置情報に対する価値観はまたアップデートしていくでしょう。
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