今や生活に欠かせないスマートフォン。日本では、2009年に初めてAndroid搭載のスマートフォンが発売され、約15年の間に急速にその所有率を伸ばしています。
2021年時点のデータによるとモバイル端末の世帯保有率は97.3%にのぼり、そのうち88.6%がスマートフォンという統計結果も出ています。(出典元:総務省 令和4年版情報通信白書|総論[1])
そんなスマートフォンでよく見かけるのが、「通知」ではないでしょうか?操作していなくとも、新着のメッセージや、インストールしているアプリからの最新情報をお知らせしてくれます。
この通知は「プッシュ通知」と呼ばれ、ユーザーにとって便利な機能というだけでなく、企業にとっても、ユーザーと接点を持つための有効的な手段として、注目を集めています。
そこで今回は、スマートフォンの便利機能である「プッシュ通知」について、基礎的な知識から、ユーザーが知りたいプッシュ通知の設定方法や、モバイルアプリ開発を検討していて気になる、プッシュ通知に使われている技術やメリット、注意点、活用のコツまで解説していきます。ぜひ最後までご覧ください!
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プッシュ通知とは、デバイスにお知らせを直接送信し、表示させる機能のことです。
アプリケーションを起動していなくても、デバイスであらかじめ通知を許可したアプリは、指定された方法で通知を表示します。例えば、ロック画面やステータスバー(画面上部でアイコンが表示されている部分)などへ自動表示されるため、ユーザーは手間を取らずに最新情報を受け取り、ワンタップで内容を確認することができます。
プッシュ通知が重要視されるようになったきっかけは、スマートフォンの普及と言われています。今や1人1台当たり前に所持するようになったスマホは、企業にとっては、消費者(ユーザー)と接点を持つ重要なツールの1つとなっています。そのため各企業では、従来別の方法で提供していた商品・サービスをアプリケーションへ切り替えたり、アプリ用に新しくサービスを考案したりと、ユーザーとの繋がり強化の一環として、モバイルアプリ開発が盛んになってきています。
しかし、ただアプリケーションを開発してインストールしてもらうだけでは、有効的に活用できているとは言えません。インストールしてから、いかにユーザーの目に留まり、企業・商品・サービスを思い出してもらえるか、そして使ってもらえるかが重要なポイントとなります。
そこで有効的なのが、「プッシュ通知」の活用です。
プッシュ通知のお知らせ方法は、着信音やバイブだけでなく、カラーライトやステータスバーへのアイコン表示、ロック画面表示など様々です。デバイスにより通知の設定方法は異なりますが、例えばこまめな連絡や確認が必要な場合は、ロック画面にラインのプッシュ通知やメールのプッシュ通知(Gmailプッシュ通知など)の設定をすることで、受信したことをすぐに確認することができます。このように、ユーザーはライフスタイルに合わせて、通知方法を設定することができます。
ここでは、プッシュ通知の設定方法を解説していきます。設定の際、OSのバージョンによって操作が変わる可能性があるため注意が必要です。
【iPhoneプッシュ通知設定(iOS12以降)】
iPhoneでは、アプリごとに通知のON/OFFやカスタマイズが可能です。
設定 → 通知 →「通知スタイル」で設定したいアプリを選択する →「通知を許可」をONまたはOFFにする(ONにした場合は、通知を出す場所など詳細な設定が可能)
【Androidプッシュ通知設定(Android10以降)】
Androidスマホの場合は、スマホ全体とアプリごとの2つの設定方法があります。
・スマホ全体の通知設定
設定 → 通知 → ロック画面上の通知 → スマホの通知のデフォルト設定を選択
・アプリごとの通知設定
設定 → 通知 → 設定したいアプリを選択 → アプリの通知をONまたはOFFにする
通知の許可設定をしたのにも関わらず、プッシュ通知が来ないことがあるかもしれません。そんな時は、以下の点を確認してみましょう。
・iPhoneのおやすみモードやAndroidスマホのサイレントモードのような、プッシュ通知に影響するシステム全体の設定に問題がないか確認
・スマホの稼働時間が長かったり、何かしらの問題が内部で起きている可能性があるため、設定で改善が見られない場合は、一度電源の再起動を行う
プッシュ通知の送信方法には、インターネットの接続時にお知らせを届ける「リモートプッシュ通知」とオフライン時もお知らせを届けることができる「ローカルプッシュ通知」の2種類があります。
・リモートプッシュ通知
iPhoneやAndroidのスマホがインターネットに接続されている、つまりオンライン状態の時にお知らせを届ける通知方法です。メッセージングアプリの新着メッセージ通知(例:ラインのプッシュ通知)や、ショッピングアプリから届く新商品や再入荷、セール情報などの通知がこれに該当します。最新情報をリアルタイムでユーザーに届けれるため、集客や販促の側面から大きな役割を果たすと言われています。
・ローカルプッシュ通知
ローカルプッシュ通知は、アラームやスケジュール、リマインダーなど、ユーザ自身が行なった設定や、デバイスの位置情報が特定の場所に入った時などに届く通知です。リモートプッシュ通知と違い、インターネットに接続されていないオフラインの状態でも通知が届くのが特徴です。
プッシュ通知の仕組みは、iPhoneやAndroidよって異なる技術が用いられています。以下で解説していきます。
【iPhoneプッシュ通知】
iPhoneプッシュ通知には、APNs(Apple Push Notification)という技術が使われています。iOSの場合、ユーザーがアプリをインストールしたのちに、プッシュ通知を受け取るか否かユーザーの判断で設定します。
ユーザーがプッシュ通知を許可すると、端末を識別するためのIDである「トークン」がAppleのサーバに送られます。そのトークンをアプリ運営側が読み取り、プッシュ通知を送信します。ちなみにトークンには、個人情報は含まれていません。
【Androidプッシュ通知】
Androidプッシュ通知には、FCM(Firebase Cloud Messaging)という仕組みが使われいています。Firebaseとは、Googleが提供するモバイルアプリ開発やWebアプリ開発のプラットフォームです。
FCMは、ユーザーが端末上で通知許可を行うと情報登録とID発行がされます。そしてIDはサードパーティアアプリケーションサーバを介してIDとメッセージ内容がFCMサーバに送られ、そこからここのデバイスに通知が送信されます。
また、Androidの場合、インストールしたアプリのプッシュ通知の初期設定は許可になっているため、不要な場合は設定画面より解除する必要があります。
【Webプッシュ通知】
iPhoneとAndoridのプッシュ通知は、デバイスの独自機能を使用しています。しかし、ここまで紹介した技術とは異なる技術を用いることで、Webサイトでもプッシュ通知を送信することが可能です。
・APIを使ったWebブラウザのプッシュ通知
Webサイトの閲覧中に「通知を許可しますか?」というような文言が出てくることがあると思います。これを許可すると、Notification APIという技術を活用し、Webブラウザのプッシュ通知(例:chromeのプッシュ 通知)を送信することができます。しかし、すべてのブラウザへ通知を送れる訳ではなく、ユーザーが使用するブラウザとAPIの相性も影響があるため、注意が必要です。
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・PWAのプッシュ通知を使う
PWA(Progressive Web Apps)といいうWebサイトをアプリのように端末にインストールする技術を使って、PWA上で通知を出すことも可能です。これは、Androidのみが対応しています。
ユーザーとの接点を持つために活用されているプッシュ通知ですが、そこから得られるメリットは多くあります。
・アプリを起動せずに最新情報を素早く受け取れる
プッシュ通知で新着メッセージやニュース、SNSの投稿、ショップアプリからのお知らせなど最新の情報を、アプリを開かずとも確認することができます。
・情報に目を通してもらえる確率が高い
今まで企業とユーザーがコミュニケーションをとるツールの1つとして、メールマガジンがありましたが、この開封率は10〜20%程度と言われています。プッシュ通知であれば、すぐに画面上に表示されワンタップで確認できるため、開封率は平均で25%以上、場合によっては80%近くの開封率と言われており、情報に目を通してもらえる可能性が高いと言えます。
・ユーザーの利用率の向上が見込める
ユーザーはスマホの中に多くのアプリをインストールしているため、しばらく開かないアプリも多く存在します。そこで、プッシュ通知が来ることで自然とアプリを開く機会を作り、しばらく離れていたユーザーを呼び戻す効果が期待できます。
・即効性のある集客/販促
キャンペーン情報の配信により、普段使っているユーザーはもちろん、しばらく離れていたユーザーも自然とサービスに接触する機会を作ることができます。それにより、顧客単価の向上や全体的な売り上げ向上が見込めます。また、プッシュ通知はWebサイトへの誘導率がメールと比較すると約10倍と言われており、ユーザーの反応にも期待できます。
・顧客ロイヤリティ向上
プッシュ通知の回数=企業とユーザとの接触回数です。そのため、効果的なプッシュ通知を送信することができれば、企業や製品・サービス自体への信頼や愛着といったロイヤリティを高めることができます。
メリットの反面、ビジネスとユーザーのそれぞれの目線からの注意点もあります。この注意点まできちんと理解した上で活用していく必要があります。
・通知が多いと見逃す可能性あり
プッシュ通知が多すぎると、確認が面倒くさくなったり、中身をしっかりと確認しないまま削除してしまう可能性があります。そのため、高頻度の通知は避けた方がいいでしょう。また、ユーザー側も、不要なアプリを整理しておくことで、重要なお知らせを見逃すことがなくなります。
・作業中に通知が割り込む可能性
プッシュ通知がゲームや動画視聴中に割り込んでしまう可能性があります。デバイスで何か集中して作業したい場合は、各デバイスの通知OFFの設定を活用していきましょう。
・バッテリー消費
通知が来るたび画面が点灯するため、バッテリー消費は避けれない問題です。
ここまで挙げてきたプッシュ通知の特徴やメリット・デメリットを踏まえ、どのような活用が有効的なのでしょうか?ここで、プッシュ通知を活用する際のコツをご紹介します。
・ユーザーを惹きつける文面作りとユーザー目線での配信
プッシュ通知に記載できる文字数は限られています。そのため、タイトルや文章は伝えたいことを端的かつ、ユーザーに興味を持ってもらえるような文章にする必要があります。そのためには、アプリのユーザー層の分析やニーズの把握が必要不可欠です。分析結果をもとにユーザーに寄り添った文章を作成することで、プッシュ通知を開く可能性も上がり、顧客ロイヤリティにも繋がります。
・ユーザーの生活リズムに合わせる
通知についてはユーザー側で設定できますが、深夜や早朝の時間帯の通知はユーザーにあまりいい印象を与えません。また学校や仕事が終わり、1日のうちで比較的スマホを利用するとされている18時〜23時は通知が開封されやすい傾向にあります。ユーザー層を分析し、ターゲットの生活リズムに合わせてプッシュ通知を配信することで、開封の確率を上げることができます。
ここまで、スマホやタブレットの便利な機能である「プッシュ通知」について、基礎的な知識から、通知の種類や使われている技術、企業におけるメリットや活用のコツまで解説してきました。
今や生活に欠かせない存在となったスマホは、企業にとってもユーザーと接点を持つために有効的なツールのため、アプリの開発・活用が盛んになってきています。
最新情報を手間なく素早く受け取ることができる上、即効性のある集客や販促の側面や顧客ロイヤリティ向上といった面もあるため、アプリ開発とともに、プッシュ通知も有効活用していきたいところです。
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