互換性テストとは、アプリケーションが安定し始めた段階で、各プラットフォーム/環境で正常に動作するかを確認するテストを指します。
そもそもソフトウェアテストは様々な種類に分類することができますが、特にソフトウェアの「機能」に焦点を当てたソフトウェアテストは、以下の2つに分類することができます。
・機能テスト
ソフトウェアの機能が要件通りに実装され、期待していた動作をするかのテスト
・非機能テスト
特定機能や動作以外の、操作性やパフォーマンス、セキュリティ、スケーラビリティといった側面に焦点を当てたテスト
上記2つのうち、互換性を確認するソフトウェアテストは、「非機能テスト」に当たります。
Webサイトやモバイルアプリがすべてのプラットフォームにおいて互換性を持ち、シームレスなユーザー体験を提供できるかはとても重要で、アプリケーションの成功にも影響します。そのため、ソフトウェアアプリケーションの互換性は、徹底的なテストが求められます。
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ソフトウェア開発は元々、特定のプラットフォーム向けに行われ、複数のプラットフォーム/環境で動作する必要がなかったため、互換性テストはそれほど重要視されていませんでした。
しかし、2000年代に入ると、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイスなど、多種多様なモバイルデバイスが普及し、ソフトウェアの在り方に大きな転換期が訪れました。この時代は特に、AndroidやiOSデバイス向けのモバイルプラットフォーム間で互換性テストが始まった時期として知られています。
ソフトウェアには、WindowsやMac、Linuxなど様々なOSがあります。これらのOS、そして各バージョンにおいて、ソフトウェアが正常に動作するかの確認を行います。互換性を確認するソフトウェアテストには、以下の2種類があります。
・フォワード互換性テスト
現在のソフトウェアが、新しいハードウェアやOSでも問題なく動作するかを確認するテスト
・バックワード互換性テスト
新しいハードウェアやOS上で、過去のソフトウェアが正常に動作するかを検証するテスト
他にも、以下のような項目で互換性テストを行います。
【ハードウェア】
・RAM(4GB、6GB、8GBなど)
・プロセッサ(Intel Core i3、Intel Core i7など)
・グラフィックスカード(GeForce GTX、Nvidia Gridなど)
【スマートフォン】
・GALAXY(Samsung社)
・Pixel(Google社)
・iPhone(Apple社)
【ネットワーク】
・帯域幅(30Mbps、40Mbpsなど)
・接続速度(3G、4G、5G、Wi-Fiなど)
互換性テストは、ソフトウェアが様々なプラットフォーム、デバイス、環境において、画面サイズ、解像度、ハードウェア構成に適応し、一貫したスムーズな動作を保証するために非常に重要です。
また、OS(例:Windows、macOS、Android、iOS)やブラウザ(例:Chrome、Firefox、Safari、Edge)の各バージョンで問題なく動作することを確認しておく必要もあります。さらに、地域ごとの設定(例:言語、タイムゾーン)も考慮した、ユーザー体験の一貫性を確認するのにもとても重要です。
互換性テストによって、潜在的な問題を早期に特定することで、ビジネスリスクを軽減し、本番環境でのバグ発生を防ぎ、顧客の不満を回避することができます。
互換性を確認するソフトウェアテストには多くのツールがあります。以下に例を挙げていきます。
・Browserstack
iPhone、Galaxy、Pixel、Nexusなど、様々なAndroid/iOSのバージョンでテストが可能です。また、WindowsやmacOS上のEdge、Safari、Chrome、IE、Firefoxといった複数のブラウザにも対応しています。
・Lambda Test
AIを活用した、企業向けのテストを効率化するためのクラウド型プラットフォームサービスです。スピード感のあるテストの実行で、市場投入までの時間を大幅に短縮し、品質の高いリリースやDXを後押しします。
・Browserling
Web開発者やWebデザイナー向けの、リアルタイムで操作可能で、手軽なクロスブラウザテストを提供するサービスです。
・Sauce Labs
品質を重視した大規模なWeb/モバイルアプリの開発、テスト、リリースをサポートします。
・TestingBot
クラウドベースのクロスブラウザテストプラットフォームで、手動と自動問わず、ブラウザ互換性テストが可能なサービスです。ユーザーは、自分のブラウザ上で異なるブラウザやOSを使用して、WebサイトやWebアプリのテストができます。
互換性テストの自動化は、ソフトウェアの互換性を効率的に検証するために自動化ツールを使用します。自動化ツールには、Selenium、Cypress、TestCafeなどがあり、複数のブラウザやそのバージョンに渡るテストを実行するために広く利用されています。
また、モバイルアプリ用のAppiumや、Webアプリ用のSelenium Gridなどの自動化フレームワークは、異なるOSや、様々なデバイスでのテストが可能です。
・コスト
互換性テストは、多様なデバイス、プラットフォーム、環境を維持するために、コストが高くなる傾向にあります。特に大規模なアプリケーションの場合、デバイスの購入や、ブラウザの設定などに大きなコストの負担があります。
・時間がかかる
互換性テストは、様々なデバイス、プラットフォーム、OS、ブラウザの組み合わせでソフトウェアをテストする必要があるため、時間がかかる場合があります。また、テストを自動化しても包括的でカバレッジ(網羅性)のあるテストを実施するには、時間がかかってしまう可能性があります。特に、頻繁に更新が行われる大規模なアプリケーションでは、これが大きな課題となります。
・カバレッジの不足
すべてのデバイス、OS、ブラウザ、バージョンの組み合わせをテストすることが現実的ではないため、カバレッジが不足する可能性があります。また、リソースの制約により、一部のプラットフォームや構成が見過ごされる場合があり、それによって互換性の問題が発見されないままになる可能性もあります。
互換性テストは、自動化やクラウドベースのソリューション、AIの発展によって、より効率的でスムーズに拡張できるようになると予想されています。特に自動化は、引き続き互換性テストにおいて重要な役割を果たし、よりスマートなツールの登場や、新たなデバイス/プラットフォーム、自動アップデートにも適用していくと予想されています。
また、クラウドテストプラットフォームは、企業が様々なデバイスや設定、環境でソフトウェアをテストできるようになるため、人気が高まっていくでしょう。これにより、従来の自動化を補完し、より広範なカバレッジが可能になります。
互換性テストは、自動化、AI、クラウドプラットフォームによって、より効率的でスピード感のあるテストが可能となり、日々進化するデバイスや環境に対応したソフトウェア開発の手助けとなるでしょう。